ゆるめの観察日記

書き留めたい衝動に駆られたら。

思い出はいつまでも

先日出町柳に行った。 彼氏が大学生活を四年間過ごした街である。私が初めて出町柳を訪れたのは大学四回生の年の時、もう働いていたので保育士一年目の時だった。

 

それまで京都といったら有名な名所や、河原町にしか行ったことがなかったので鴨川デルタや下鴨神社に歩いていけるということに驚き、自然溢れる素敵な場所だなぁと感動した。

 

その後彼が京都を離れた今でも、何度か機会を見つけては出町柳へ行った。わざわざ足を運ぼうとするほどの魅力がそこにはあるのだ。

 

たくさんの思い出がその場に残り続け、一定期間離れていたとしても、再訪するとすぐにその時の記憶が蘇ってくる。

 

自分に置き換えて考えると、生まれた時から数えて今の家は三つ目になる(多分)

 

一番初めの家には生後から四歳の春くらいまで住んでいた。

記憶は正直無いに等しいくらい薄まってしまったが、家が長い坂を登った上にあったことや母と車で保育園へ朝向かうときにB'zを流さないと不機嫌になっていたこと…お風呂が古過ぎてシャワーではなくてホースで身体を洗っていたり…なんとなくうっすらと覚えている。

 

それから二代目の家へと引っ越したのが年中の時だった。この家では小学六年生まで過ごしたのでかなり印象強いし、今でもその街への愛着がある。

 

書き出すと思い出は山ほどあるが、今回焦点を当てたいのが川だ。

 

校区内にまあまあ長くて綺麗な川があった。 都賀川という。

春には川沿いに桜が満開に咲き、山の方から海沿いまでたくさんのお花見スポットが現れる。

 

桜と阪急電車 毎年必ず写真を撮りに行っている

ちなみにコロナ禍前はこの賑わい

 

やがて初夏を過ぎ、暑さ厳しい夏になると川開きで大勢の子どもたちが水遊びをしにやってくる。

自分も小学生時代は家族や友達と遊びに行っていた。特に楽しいのが川幅が狭くなっていて流れの早い所だった。そこを上から滑ると擬似スライダーみたいで楽しく、夜になるまで遊んで帰っていた。

 

本来都賀川ではバーベキューは禁止だが、している人もたくさん居る。確かに楽しい気持ちは分かる。けど近隣に住んでいると辞めてほしい気持ちの方が強くなったので都賀川ではバーベキューはしないでください…笑

 

そんな感じで幼少期の都賀川の印象は【楽しいところ】その一点だった。

 

しかし、その印象が変わってしまった事故があった。

それが「都賀川水難事故」だ。

 

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a.m.wikipedia.org

 

当時中学一年生だった。 小学六年生の三学期に引っ越した私は、奇しくも都賀川からとても近い場所に住んでいたのでこのこともよく覚えている。

 

その日部活をしていたのだが、昼すぎにかけて雨足が強まり雷も強くなっていた。

音楽室にいたが、途中で校内が停電してクーラーも切れたのでびっくりしたのを覚えている。多分警報も出ていたが、コンクール前の大事な時期ということもあって、そのまま最終下校時間まで部活をして家へ帰った。

テレビを見ると水難事故について夕方のトップニュースとして報じられていた。十六名の方が流され、結果として五名の方が亡くなった痛ましい事件だった。

 

今まで親しみある川だった都賀川が突如として「怖いところ」「行ってはいけない場所」になってしまい、道を歩く人はいなくなってしまった。

 

その後整備を行い、川が増水する恐れのある降雨時には非常灯で知らせてくれるシステムや、川へ降りる階段や坂道に扉が設置され、数年後にはふたたび賑わいを戻していった。

 

その頃に我が家にやってきたのが愛犬のジャックだった。

初めて犬を飼うということもあって、どこに散歩にいけばいいのか迷っていた。なんせ大きいしいっぱい散歩しないといけない。「中型犬」と動物病院では言われたが、全然大型犬でもいけるくらいの体格をしていて、小型犬とよく遭遇する普通の道もちょっと気をつかう。

 

そこで散歩コースに選んだのが都賀川だった。 信号はもちろんないし、河口の方から北上していくと結構な距離があるし、往復で歩くと結構いい運動になる。人が少ない時は走ってもなんの問題もないのでよく下りはダッシュしたりしていた。ジャックが引っ張ってくれるので異常なスピードが出る。さすが雪ゾリ犬。 (何度も転けそうになりました、危険。)

 

夏には川に入れてあげたりもした。ジャックは足が長いから全身水に浸かるには水位が足りないが、それでもお腹あたりまで水に浸かって楽しそうにしていた。ジャックの他にも気持ち良さそうに川へ入っている犬がたくさんおり、人にとっても犬にとってもこの街において欠かせない川だと感じていた。

 

そんな川にもジャックがいなくなってからはめっきり行くことが無くなってしまった。

散歩していた時によく見かけていた犬がいたが、最近ジャックが歩いていないから向こうにも「あのハスキーいないな…」と思われているんじゃないか、なんて思ってみたりする。

(自慢みたいになるけどジャックはイケメンだったからモテていた)

 

それと逆のこともあった。ずっと見かけていた犬がどんどんゆっくりと歩くようになり、いつの間にか姿を見かけなくなってしまう。散歩中にしかお目にかかれない関係であってもそれを悟るとなんだか悲しくなる。

 

 

 

結局なにが言いたかったのかというと、自分にとって馴染みの深い場所(店や母校など)はずっと変わらないまま残っている保証が無いが、川や海・山。それらのものは余程のことがない限りそこに在り続ける。

 

川はずっとそこにあり、久しぶりに赴いたとしてもすぐ当時の出来事を鮮明に思い出させてくれる。これからもずっとずっと無くならないでいてほしいと願う。